生物工学:in vivoでの塩基編集はマウスでハッチンソン・ギルフォード早老症候群を救済する
Nature 589, 7843 doi: 10.1038/s41586-020-03086-7
ハッチンソン・ギルフォード早老症候群(HGPSまたは早老症)は通常、核のラミンAをコードするLMNA遺伝子のC•GからT•Aへの優性ネガティブ変異(c.1824 C>T; p.G608G)によって引き起こされる。この変異はRNAのスプライシング異常を引き起こし、それによってプロジェリンが産生される。プロジェリンは毒性のあるタンパク質で、急速な老化を誘導し、早老症を患う小児の寿命は14歳程度に短縮される。アデニン塩基エディター(ABE)は、二本鎖DNA切断やドナーDNA鋳型を必要とせずに、最小限の副産物で標的のA•T塩基対をG•C塩基対に変換する。今回我々は、早老症の小児に由来する培養繊維芽細胞やHGPSのマウスモデルで、病原性HGPS変異をABEを使って直接修正したことを報告する。レンチウイルスによりABEをHGPS小児患者由来の繊維芽細胞に送達すると、病原性対立遺伝子の87~91%が修正され、RNAのスプライシング異常が減少して、プロジェリンレベルが低下し、核の異常が修正された。DNAとRNAのオフターゲット編集について不偏的解析を行ったところ、使われた患者由来繊維芽細胞ではオフターゲット編集は検出されなかった。ヒトLMNAのc.1824 C>T対立遺伝子をホモ接合で持つトランスジェニックマウスでは、ABEをコードしたアデノ随伴ウイルス9(AAV9)の眼窩後部への単回注入により、病原性変異のかなりの規模での持続的な修正(注入後6か月間にわたり、さまざまな器官で20~60%程度)、正常なRNAスプライシングの回復、プロジェリンタンパク質レベルの低下が起こった。in vivoでの塩基編集はマウスの血管病変を救済し、血管平滑筋細胞の数を維持し、外膜繊維症を防いだ。マウスでは、生後14日目でのABE発現AAV9の単回注入は活力を改善し、寿命の中央値が215日から510日へと大幅に延長した。これらの知見は、in vivo塩基編集は遺伝病の根本原因の直接的な修正によって、将来的にHGPSなどの治療法となる可能性があることを示している。

