分子生物学:ヒストンH1の喪失はクロマチンの3D構造を破壊することでリンパ腫を進行させる
Nature 589, 7841 doi: 10.1038/s41586-020-3017-y
リンカーヒストンH1タンパク質はヌクレオソームに結合してクロマチンの凝縮を助けるが、その生物学的機能はほとんど解明されていない。ヒストンH1のアイソフォームB~Eをコードする遺伝子(H1B、H1C、H1D、H1E;それぞれの別名はH1-5、H1-2、H1-3、H1-4)はB細胞リンパ腫に高頻度で見られるが、これらの変異とがんの発症との関係やそれに関わる機構はまだ分かっていない。今回我々は、リンパ腫に関連するH1対立遺伝子が、リンパ腫の遺伝的ドライバー変異であることを明らかにする。H1の機能が破壊されると、ゲノム構造の重大な再構築が起こり、これにはクロマチンの局所的な状態が凝縮から弛緩に大きく変化するという特徴がある。この脱凝縮が、主としてヒストンH3リシン36のジメチル化(H3K36me2)の獲得、もしくは抑制性のヒストンH3リシン27のトリメチル化(H3K27me3)の喪失(あるいはこの両方)によって、エピジェネティック状態に全く異なる変化をもたらす。これらの変化が、正常なら初期発生の間には抑制されるはずの幹細胞遺伝子の発現を引き起こす。マウスでは、H1cとH1e(それぞれの別名はH1f2、H1f4)の喪失により胚中心B細胞の適応度と自己再生能が高まり、最終的には再増殖能の上昇した悪性度の高いリンパ腫につながる。まとめるとこれらのデータは、H1タンパク質は本来的には、初期発生遺伝子を構造的に接近不能なゲノム区画へと隔離するのに必要なことを示している。我々はまた、H1が真正の腫瘍抑制因子であることを確証し、H1の変異が主としてゲノムの三次元構造の再構築を通して悪性転換を進行させることを明らかにした。こうした再構築の結果、発生の際に抑制されている遺伝子がエピジェネティックに再プログラム化され、抑制が解除される。

