神経科学:マウスの同性と異性に対するマウンティング行動は異なる視床下部に制御されている
Nature 589, 7841 doi: 10.1038/s41586-020-2995-0
外見上似ている動物行動も、異なる文脈では異なる意図を表現することがあるが、その柔軟性が、神経回路レベルでどのようにして達成されているのかは分かっていない。例えば、多くの動物種の雄は、同種の同性に対しても異性に対してもマウンティング行動を示すが、この行動の意図や神経符号化が類似しているのか異なるのかは不明である。今回我々は、雄の実験室マウスが雌と雄に対して行うマウンティングが、それぞれ超音波発声(USV)を伴うか否かによって識別できることを示す。これらの結果と他の行動データから、雄に対するマウンティングの多くは攻撃的だが、まれに性的な場合もあることが示唆された。我々はまた、USVを伴う(USV+)マウンティングとUSVを伴わない(USV−)マウンティングで用いられる視床下部の神経基盤が同じなのか別なのかを調べた。内側視索前野(MPOA)または腹内側視床下部の腹外側亜領域(VMHvl)でエストロゲン受容体1(ESR1)を発現するニューロンを微小内視鏡で画像化したところ、USV+とUSV−のマウンティング中に異なるパターンのニューロン活動が見られ、マウンティングのタイプを、いずれかの領域の集団活動から解読することができた。ESR1と小胞性GABA輸送体(VGAT)を発現するMPOAニューロン(MPOAESR1∩VGATニューロン)を光遺伝学的に交差刺激すると、USV+マウンティングがロバストに促進され、雄に対する攻撃をUSV+マウンティングに転換することができた。対照的に、ESR1を発現するVMHvlニューロン(VMHvlESR1ニューロン)を刺激すると、USV−マウンティングが促進され、雌の尿で誘発されるUSVが抑制された。神経終末の刺激実験から、これらの相補的な抑制効果は、MPOAとVMHvlの間の相互投射によって媒介されていることが示唆された。まとめるとこれらのデータは、雄の生殖行動状態を因果的に導くニューロンを遺伝的に多く含む視床下部亜集団の存在を明らかにしており、生殖行動状態と攻撃行動状態が、それぞれMPOAESR1ニューロンとVMHvlESR1ニューロンに分布する別個の集団符号によって表現されていることを示している。このように、異なる内的状態を表現する外見上似ている行動は、異なる視床下部ニューロン集団によって符号化されている。

