免疫学:ALDH4A1は防御抗体の標的となるアテローム性動脈硬化症の自己抗原である
Nature 589, 7841 doi: 10.1038/s41586-020-2993-2
心血管疾患(CVD)は世界の死因の第1位であり、CVD関連死のほとんどは心筋梗塞か脳卒中が原因である。血栓症や心血管系事象の主要な基礎的原因はアテローム性動脈硬化症であり、この炎症性疾患は長期間無症状のままのこともある。この分野では治療と診断の選択肢が緊急に必要とされている。アテローム性動脈硬化症のプラークには自己抗体が含まれており、アテローム性動脈硬化症と自己免疫の間には関連性がある。しかし、アテローム性動脈硬化症における免疫原性の誘発要因や自己抗体応答の影響についてはよく分かっていない。今回我々は、アテローム性動脈硬化症に関連した抗体レパートリーのハイスループット単一細胞解析を行った。アテローム性動脈硬化症モデル(Ldlr−/−)マウスと対照群マウスの1700個以上のB細胞において抗体遺伝子塩基配列解読を行うことで、アテローム性動脈硬化症の状況でin vivo増殖させたBリンパ球クローンで発現する56の抗体が特定された。増殖クローン由来の抗体の3分の1はアテローム性動脈硬化症プラークに対して反応性を示し、病変内のさまざまな抗原が抗体応答を引き起こし得ることが明らかになった。高深度プロテオミクス解析から、プロリン代謝に関与するミトコンドリアのデヒドロゲナーゼであるALDH4A1が、これらの自己抗体の1つであるA12の標的抗原として特定された。ALDH4A1の分布はアテローム性動脈硬化症では変化しており、循環血中ALDH4A1はアテローム性動脈硬化症のマウスとヒトで増加することから、ALDH4A1を疾患バイオマーカーとして利用できる可能性が裏付けられた。A12抗体をLdlr−/−マウスに注入すると、プラーク形成が遅くなり、循環血中の遊離コレステロールとLDLが減少した。これらの結果は、抗ALDH4A1抗体はアテローム性動脈硬化症の進行を防ぎ、CVDの治療に用いることができる可能性を示唆している。

