ナノテクノロジー:光子アバランシェナノ粒子による巨大な非線形光学応答
Nature 589, 7841 doi: 10.1038/s41586-020-03092-9
アバランシェ(なだれ)現象は、急峻に非線形なダイナミクスを用いて小さな摂動から不相応に大きな応答を生じさせる現象で、多くの事象や材料において見られる。光子アバランシェによって、位相共役光学イメージング、赤外量子計数、高効率アップコンバージョンレーザー発振などの技術が可能になる。しかし、こうした光学的応用の基礎となる光子アバランシェ機構は、これまでバルク材料や凝集体でしか観測されておらず、その有用性と影響が制限されている。今回我々は、単一ナノ構造体(微小なTm3+ドープ・アップコンバージョンナノ結晶)における室温での光子アバランシェの実現を報告し、最大生体透過性の近赤外スペクトル窓における超解像イメージングへの応用を実証する。アバランシェナノ粒子は(ANP)は連続波レーザーで励起でき、明確な励起パワーしきい値、しきい値における非常に長い立ち上がり時間、基底状態吸収の1万倍以上の主要励起状態吸収など、光子アバランシェを決定付ける特徴を全て示す。アバランシェしきい値を超えると、各ナノ結晶において正の光学フィードバックが誘起されるため、ANP放出は励起強度の26乗の非線形性で増大した。これによって、70 nm未満の空間分解能での光子アバランシェ単一ビーム超解像イメージングの実験的実現が可能になった。こうしたイメージングは、コンピューター解析を行わずに、単純な走査型共焦点顕微鏡法のみを用いて実現された。ANPの急峻な非線形性に、既存の超解像技術と計算方法を組み合わせることによって、より高い分解能と他のプローブの約100分の1の励起強度でのイメージングが可能になった。また、ANPの低い光子アバランシェしきい値と優れた光安定性から、サブ波長イメージング、光センシング、環境センシングを含む、多種多様な応用における有用性も示唆された。

