テクトニクス:リソスフェアの熱化学的分化とクラトン下マントルの起源
Nature 588, 7836 doi: 10.1038/s41586-020-2976-3
クラトン(安定陸塊)は大陸リソスフェア形成の初期の歴史を記録しているが、それがどのようにして地球上のリソスフェアで最も安定した部分となったかはよく分かっていない。本論文では、メルトが枯渇した大規模なクラトン下リソスフェア・マントル(CLM)の形成とクラトンへの進化の機構を提案する。数値モデルから、伸張するリソスフェア下で高温の初期地球マントルの大規模な減圧溶融が起こることが示され、この部分ではメルトの抽出によって深部に大量の枯渇したマントルが残される。この脱水した、より硬いマントルは、さらなる変形に抵抗してひずみの移動と冷却を生じさせ、枯渇したマントルのリソスフェアへの同化が起こる。ひずみの局所化と硬化の間の負のフィードバックによって、長期にわたる拡散伸長と大量の枯渇したCLMの配置が維持される。低圧におけるCLMの形成と、深部でのその再平衡によって、深度–温度条件によって制約された太古代リソスフェアの進化が再現されるが、その一方で、太古代のクラトンの大きな枯渇度とメルトの体積は、リソスフェアの強度がより低いモデルと最もよく一致する。その他の点ではプレートテクトニクスが起こり得るこうした条件下では、熱化学的分化によって降伏と縁辺の形成が効果的に妨げられる。すなわち、地殻伸張とリソスフェアの沈み込みは短命で、冷却するCLMに残存構造として埋め込まれ、太古代のクラトンに見られる再循環して再生された環境が再現される。こうした構造は、約5億年間継続した初期の段階で大規模に溶融し広範に再循環しているが、モデル化されたリソスフェアでは、分化と安定化が徐々に進行し、再循環と再生が間欠的になる。初期の主要な溶融事象と再循環事象によって、始原的な冥王代のリソスフェアと地殻の生成と消失が説明され、その一方で、その後の安定化と間欠的な再生によって、太古代における大陸クラトンの形成の背景が得られる。

