物性物理学:軌道チャーン絶縁体における磁気秩序の電気的スイッチング
Nature 588, 7836 doi: 10.1038/s41586-020-2963-8
磁性は、一般的にフェルミ統計とクーロン反発相互作用の複合効果に起因し、この効果は非ゼロ電子スピンの基底状態に有利に働く。結果として、スピントロニクスとマルチフェロイクスにおける長年の技術的目標である、電場によるスピン磁性の制御は、間接的にしか実現できない。今回我々は、軌道チャーン絶縁体において磁気状態の直接電場制御を実験的に実証する。この絶縁体は、非自明なバンドトポロジーが軌道角運動量の長距離秩序に有利に働くが、スピンは無秩序のままであると考えられている磁気系である。我々は、単層グラフェンをBernal積層2層グラフェンに対して回転欠陥を持つよう配置したファンデルワールスヘテロ構造を用いて、狭くてトポロジカルに非自明なバレー投影モアレミニバンドを実現した。これらのバンド内で、モアレ単位格子当たり電子1個および電子3個の充填率において、横抵抗がh/2e2(hはプランク定数、eは電子の電荷)にほぼ等しい量子化異常ホール効果が観測された。これは、系の自発分極によってチャーン数2の単一バレー投影バンドが形成されたことを示している。モアレ単位格子当たり電子3個の充填率では、化学ポテンシャルの電場効果制御によって異常量子ホール効果の符号を反転できることが分かった。さらに、この転移がヒステリシスを伴うことを利用して、我々は電場誘起による不揮発性の磁気状態反転を実証する。理論解析からは、この効果がトポロジカルエッジ状態に起因しており、こうした状態が磁化の符号の変化、ひいては有利な磁気状態の反転を生じさせることが示された。磁気状態の電圧制御を用いることで、カイラルエッジ状態が現れる不揮発性磁区構造を電気的にパターン化できる可能性があり、再構成可能なマイクロ波回路素子から超低消費電力磁気メモリーまでさまざまな応用が見込まれる。

