古生物学:放射歯類様の捕獲用付属肢を有するカンブリア紀前期の真節足動物
Nature 588, 7836 doi: 10.1038/s41586-020-2883-7
真節足動物類の初期進化の解明は、後生動物の進化における最大の難問の1つである。カンブリア紀の極めて保存状態が良好な化石の数々から、この進化過程の解明に重要となる古生物学的データが得られており、系統発生学的研究からは、放射歯類(アノマロカリス類)が、頭部の第2体節に最前部付属肢(frontalmost appendage)を有する全ての真節足動物(これらはまとめてdeuteropod類と呼ばれる)に最も近縁な分類群であることが明らかにされている。しかし、カンブリア紀の主要な真節足動物群の間の相互関係については議論が続いており、放射歯類とdeuteropod類の間の進化的空白の理解が妨げられている。本論文では、中国のカンブリア紀前期の澄江生物相に由来する新属新種の真節足動物Kylinxia zhangiについて報告する。Kylinxiaは、融合した頭楯(head shield)、完全に体節化した(fully arthrodized)胴、関節を有する内肢といったdeuteropod類の特徴だけでなく、オパビニア(Opabinia)に見られるような5個の眼と、放射歯類に似た捕獲用の最前部付属肢を併せ持つ。系統発生学的な再構築の結果、Kylinxiaは放射歯類とdeuteropod類をつなぐ移行的タクソンとして位置付けられた。また、最も基部に位置するdeuteropod類は、原始形質的な捕獲用の最前部付属肢を特徴とし、Kylinxia、大付属肢類(megacheiran)、汎鋏角類(panchelicerate)、「大付属肢」を持つ二枚貝型の真節足動物、イソキシス類(isoxyid)を含む側系統に位置付けられた。この系統発生学的な樹形は、放射歯類と大付属肢類の最前部付属肢が互いに相同で、鋏角類の鋏角が大付属肢類の大付属肢を起源としており、大顎類(mandibulate)の感覚触角が祖先的な捕獲用付属肢に由来するという考え方を支持している。このように、Kylinxiaによって、初期の真節足動物類の間の系統発生学的な関係、最前部付属肢の進化的変遷および相違、そしてこのクレードにおける極めて重要な進化的新機軸の起源についての重要な手掛かりがもたらされた。

