遺伝学:エピジェネティック療法は逆位SINEの転写とADAR1依存性を誘発する
Nature 588, 7836 doi: 10.1038/s41586-020-2844-1
エピジェネティック抑制因子を標的とする抗がん治療は、ヒトゲノム内にあるレトロエレメントの活性化によって効果を発揮できる。レトロエレメントの転写産物は、二本鎖RNA(dsRNA)を形成可能で、これはMDA5パターン認識受容体を活性化する。このウイルス模倣状態が、がん細胞の適応性の喪失につながり、自然免疫応答と適応免疫応答を刺激する。しかし、エピジェネティック療法の臨床的有効性はこれまで限定的だった。我々はウイルス模倣応答と相乗効果を示すような標的を見つけるために、エピジェネティック療法によって活性化される免疫原性レトロエレメントの探索を行った。本論文では、イントロン内や遺伝子間にあるSINEエレメント、具体的には逆位反復配列Aluが、薬剤で誘発される免疫原性dsRNAの主な供給源であることを明らかにする。このような逆位反復Alu配列は、機能の分からない「オーファン」CpGアイランドの下流に位置することが多い。哺乳類では、ADAR1酵素が逆位反復Alu配列のdsRNAを標的として不安定化し、それがMDA5受容体の活性化を妨げる。我々は、ADAR1が負のフィードバックループを構築し、エピジェネティック療法に対するウイルス模倣応答を制限することを見いだした。患者由来のがん細胞でADAR1を枯渇させると、エピジェネティック療法の効果が高まり、腫瘍の増殖が抑えられ、がんの発生が減少した。このように、エピジェネティック療法は逆位反復Alu配列の一部を誘発することによってウイルス模倣を引き起こし、これがADAR1依存性につながる。これらの知見は、エピジェネティック療法とADAR1阻害剤を組み合わせれば、がん治療の有望な戦略になることを示唆している。

