Article

太陽物理学:太陽のCNOサイクルで生成されたニュートリノの実験的な証拠

Nature 587, 7835 doi: 10.1038/s41586-020-2934-0

星は、その存在期間の大半において、水素からヘリウムへの核融合によってエネルギーを得ている。核融合は、陽子–陽子(pp)連鎖反応と炭素–窒素–酸素(CNO)サイクルという、理論的によく理解されている2種類の過程によって進行する。太陽の中心核で起こるこうした核融合過程で放出されるニュートリノは、太陽深部を直接調べることのできる唯一の手段である。これまで、pp連鎖反応(太陽エネルギーの約99%を生成する)によって生じるニュートリノの完全な分光学的な研究は行われてきたが、CNOサイクルの実験的な証拠はいまだ報告されていない。本論文では、太陽のCNOサイクルで生成されたニュートリノを高い統計的有意性で直接観測したことについて報告する。この実験的証拠は、イタリア国立核物理学研究所のグランサッソ国立研究所の地下で行われているBorexino実験において、放射性同位体をほとんど含まない大容量の液体シンチレーター検出器を用いて得られた。この実験の主な課題は、バックグラウンドを上回る1日のカウント数が標的100トン当たりわずか数カウントという、CNOニュートリノの相互作用によって生じる超過信号を特定することであった。最近5年間における検出器の熱安定化の進歩によって、シンチレーターを汚染するビスマス210の計数率を絞り込む方法の開発が可能になった。CNOサイクルでは、水素の核融合は炭素、窒素、酸素によって触媒されるので、その速度と、放出されるCNOニュートリノのフラックスは、太陽中心核におけるこれらの元素の存在度に直接的に依存する。従ってこの結果は、CNOニュートリノを用いた太陽の金属量の直接計測に道を開くものである。今回の知見によって、太陽におけるCNO核融合の相対的な寄与が1%のオーダーであると定量化されたが、大質量星ではCNOサイクルがエネルギー生成の支配的な過程となる。今回の研究から、宇宙において星で生じている水素からヘリウムへの変換の主要な機構に関する実験的な証拠が得られる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度