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がん:TH細胞での標的化TGF-βシグナル伝達阻害によるがん免疫療法

Nature 587, 7832 doi: 10.1038/s41586-020-2850-3

がんは、宿主の組織と動的で多層的な相互関係にある悪性細胞から生じる。がん遺伝子を標的とした治療や、腫瘍応答性を示す細胞傷害性Tリンパ球を復活させる免疫チェックポイント療法などといった、がん細胞を直接死滅させることを目指したがん治療は一部の患者で有効だが、後天的な抵抗性が生じることが多い。他の治療戦略としては、がんの進行を促進する血管系の異常などの宿主組織の病態を改善させることを目指したものがあるが、血管内皮増殖因子A(VEGFA)などの血管新生促進因子の中和の臨床的恩恵は限られている。本論文では、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)が2型ヘルパーT(TH2)細胞を介するがん免疫を抑制するという知見に従い、CD4+ T細胞でのTGF-βシグナル伝達の阻害により腫瘍微小環境が再構築され、がんの進行が抑制されることを示す。免疫チェックポイント療法や抗VEGF治療に抵抗性を示す乳がんのマウスモデルにおいて、CD4+ T細胞でのTGF-β受容体II(TGFBR2)の誘導性遺伝的欠失により、腫瘍増殖が抑制された。薬理学的阻害剤として、我々はTGF-β中和活性を持つTGFBR2細胞外ドメインを免疫抑制を起こさないCD4抗体であるイバリズマブにつなぐことで二重特異性デコイ受容体を作製し、これをCD4 TGF-βトラップ(4Tトラップ)と名付けた。4Tトラップは、非標的化TGF-βトラップと比べて、腫瘍流入領域リンパ節においてTH細胞のTGF-βシグナル伝達を選択的に阻害し、腫瘍血管系の再組織化やがん細胞死という、TH2サイトカインであるインターロイキン4(IL-4)に依存する過程を引き起こした。特に、4Tトラップによって誘導される腫瘍組織の低酸素状態がVEGFA発現の上昇につながったことは重要である。VEGF阻害は、飢餓によるがん細胞死を促進し、4Tトラップの抗腫瘍効果を増幅した。従って、ヘルパーT細胞における標的化TGF-βシグナル伝達阻害は、有効な組織レベルのがん防御応答を誘導し、がん環境を直接対象とした治療基盤となり得る。

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