生物地球化学:全球の一酸化二窒素の排出と吸収消滅の包括的な定量化
Nature 586, 7828 doi: 10.1038/s41586-020-2780-0
一酸化二窒素(N2O)は、二酸化炭素と同様に、大気中に蓄積する長寿命の温室効果ガスである。過去150年にわたって、大気中のN2O濃度の増加は、成層圏オゾン層破壊と気候変動の一因となっており、現在の増加速度は10年当たり2%と推定されている。既存の国別インベントリーは、自然起源の排出(ソース)を含んでおらず、人為起源の排出を分けて評価する手法に限界があるため、N2O収支の全体像を示してはいない。本論文では、自然および人為の両排出源をもれなく扱い、窒素投入とN2O排出を制御する生化学的過程との間の相互作用を考慮した全球のN2Oインベントリーを提示する。我々は、ボトムアップ法(インベントリー、フラックス測定の統計的外挿、プロセスベースの陸と海のモデリング)とトップダウン法(大気インバージョン)を用いて、1980〜2016年に21種類の自然起源および人為起源で生じた全球のN2Oの排出と吸収消滅(シンク)を包括的に定量化した結果を示す。2007〜2016年の全球のN2O排出量は、窒素換算で年間17.0(最小推定値12.2~最大推定値23.5)テラグラム(ボトムアップ法)および16.9(15.9~17.7)テラグラム(トップダウン法)であった。全球の人為的排出量は、耕作地への窒素投入が主な原因となって過去40年間で30%増加し、現在は窒素換算で年間7.3(4.2~11.4)テラグラムに達している。この排出量増加は、大気中N2O量が増加した主要因となった。今回の知見は、新興経済国、特にブラジル、中国、インドにおいてN2O排出量が大きく増加していることを示している。プロセスベースのモデル推定結果を分析したところ、窒素投入と気候変動の間の相互作用から生じる新たなN2O–気候フィードバックが明らかになった。N2O排出量の最近の増加は、将来の最も高い人為起源排出シナリオのいくつかを超えており、N2O排出量の削減が急務であることを強く示唆している。

