Article

構造生物学:シロイヌナズナのNPRタンパク質によるサリチル酸認識の構造基盤

Nature 586, 7828 doi: 10.1038/s41586-020-2596-y

サリチル酸(SA)は、病原体に対する抵抗性に不可欠な植物ホルモンである。NPRタンパク質類がSA受容体であることはこれまでに明らかになっているが、NPRがどのようにしてSAを認識し、ホルモンシグナル伝達を協調させるのかはまだ解明されていない。今回我々は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のNPR4のSA結合コアのマッピングと、リガンドが結合した結晶構造について報告する。SAが結合したNPR4のSA結合コアドメインでは、SAが疎水性コアに完全に埋め込まれるようにαヘリックスが折りたたまれていることが分かった。リガンドが入って来る経路がないことから、SAの結合にはNPR4のSA結合コアのコンホメーションの大規模な再構築が関わっていると示唆される。我々はこれを、完全長タンパク質の水素–重水素交換質量分析法を使って、またNPR1とNPR4との結合の破壊をSAによって誘発することにより検証した。その結果、これら2つのタンパク質ではホルモンと結合する残基がほとんど同一であるにもかかわらず、NPR1のSA結合活性はNPR4に比べると極めて低いことが分かった。さらに、SA結合コアの表面には、変異させるとNPR4のSA結合活性とNPR1との相互作用を大きく変化させる2つの残基が存在することが突き止められた。また、SAに対する感受性が非常に高いNPR4バリアントを発現させると、エフェクターが誘発する免疫を損なわずに、SAを介したベースとなる免疫を増強できることが明らかになった。それは、このNPR4バリアントがSAレベルの高い時にNPR1と再結合する活性が、本来と変わらないからである。NPRタンパク質類によるSA認識の構造的機構を明らかにした今回の研究は、NPRタンパク質がSAシグナル伝達に果たす特異的な役割のさらなる研究や植物免疫の遺伝子工学的改変へのその応用に道を開くだろう。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度