創薬:プロテオリピドタンパク質の抑制はペリツェウス・メルツバッハー病を救済する
Nature 585, 7825 doi: 10.1038/s41586-020-2494-3
プロテオリピドタンパク質(PLP)をコードする遺伝子であるPLP1の変異は、X染色体連鎖性の白質萎縮症であるペリツェウス・メルツバッハー病(PMD)におけるミエリン形成の障害や神経学的機能不全を引き起こす。点変異やコピー数過剰バリアントを含むPLP1変異の多くは、重篤で致死的な疾患につながる。PLP1発現が見られない患者やPlp1ヌルマウスでは、比較的軽度の表現型を示す場合があることから、PLP1の抑制がPMDに対する一般的な治療戦略となる可能性が示唆されている。今回我々は、重度PMDのjimpy点変異(Plp1jp)マウスモデルにおいて、CRISPR–Cas9によるPlp1発現の抑制が、ミエリン形成を増加させ、神経伝達速度や運動機能を回復させるとともに、寿命を野生型レベルまで延長させることを示す。この戦略の臨床へのトランスレーションの可能性を評価するため、我々は、in vivoで神経軸全体でPlp1 mRNAとPLPタンパク質レベルを安定的に低下させるアンチセンスヌクレオチドを特定した。生後のjimpyマウスで、Plp1を標的とするアンチセンスヌクレオチドの単回投与を行ったところ、オリゴデンドロサイトの数は完全に回復し、ミエリン形成の増加、運動能力の改善、呼吸機能の正常化が起こり、寿命は最長で8か月の評価終了時まで延長した。これらの結果は、PLP1の抑制が、ヒトでのPMD治療法として開発可能であることを示唆している。さらに広く見れば、オリゴヌクレオチドに基づく治療薬をin vivoでオリゴデンドロサイトに送達して神経機能や寿命を調節できることが実証され、これによってミエリン障害に対する新たな薬理学的治療手段が確立されたことになる。

