ウイルス学:HIV-1を自然に制御できている人に見られる独特なウイルスリザーバー
Nature 585, 7824 doi: 10.1038/s41586-020-2651-8
HIV-1感染者の0.5%未満では、正常な複製能を持つウイルスのリザーバーが存在するにもかかわらず、薬剤を用いずにHIV-1複製の持続的な制御が自然に達成されている(こうした感染者を「エリートコントローラー」と呼ぶ)。血漿ウイルス血症が検出されない状態を自然に維持するこのような能力を誘導することは、HIV-1治癒研究の主な目的の1つだが、エリートコントローラーにおけるプロウイルスリザーバーの特徴は明らかになっていない。今回我々は、ほぼ全長の単一HIV-1ゲノムと対応する染色体組込み部位についての次世代塩基配列解読を用いて、エリートコントローラーのプロウイルスリザーバーが、無傷のプロウイルス塩基配列のオリゴクローナルからほぼモノクローナルのクラスターで構成されることが多いことを示す。長期間抗レトロウイルス療法を受けた感染者とは対照的に、エリートコントローラーの無傷のプロウイルス塩基配列は、ヒトゲノムにおいて非常に独特な部位に組込まれており、セントロメアのサテライトDNAあるいは第19染色体のKRAB-ZNF(Krüppel-associated box domain-containing zinc finger)遺伝子に選択的に位置していた。これらの領域はいずれもヘテロクロマチンの特徴と関連している。また、エリートコントローラーの無傷のプロウイルス塩基配列の組込み部位は、宿主ゲノムの転写開始部位や接近可能なクロマチンから離れており、抑制的なクロマチン標識が豊富に見られることが分かった。これらのデータは、プロウイルスリザーバーの独特な配置が自然のウイルス制御の構造的相関要因の1つであり、HIV-1感染の機能的治癒の際立った重要な特徴が、ウイルスリザーバーの量ではなく質である可能性を示唆している。さらに、1人のエリートコントローラーでは、15億個以上の末梢血単核細胞を解析したにもかかわらず、無傷のプロウイルス塩基配列を検出できなかったことから、これまでは同種異系の造血幹細胞移植後にのみ観察されていたHIV-1感染の完全治癒が、まれな例として起こり得る可能性が浮かび上がった。

