神経変性疾患:骨髄細胞のC9orf72はSTING誘発性の炎症を抑制する
Nature 585, 7823 doi: 10.1038/s41586-020-2625-x
筋萎縮性側索硬化症(ALS)と前頭側頭型認知症(FTD)は、臨床所見や病理、遺伝学的原因に重複が見られる神経変性疾患である。自己免疫疾患も、ALSとFTDの両方で非常によく見られるが、これはまだ説明付けされていない疫学的観察である。C9orf72遺伝子中のヘキサヌクレオチド反復(GGGGCC)の伸長は、家族性のALSおよびFTDの最もありふれた原因であり(C9-ALS/FTD)、反復配列を含むRNAとジペプチドの両方の蓄積を引き起こし、脳や末梢血細胞でのC9orf72タンパク質の発現低下を伴う。今回我々は、マウスにおいて、骨髄細胞からC9orf72を欠失させるだけで、C9orf72の完全なノックアウト個体で見られる加齢依存的なリンパ肥大や自己炎症を再現するのに十分であることを示す。C9orf72−/−マウスから単離した樹状細胞は、I型インターフェロン応答の顕著な早期活性化を示し、C9orf72−/−骨髄細胞は、細胞質ゾルDNAへの自然免疫応答の主要調節因子であるSTING(stimulator of interferon genes)タンパク質の活性化因子に対して選択的に過剰応答した。C9orf72−/−骨髄細胞では、オートリソソーム経路を介したSTINGの分解が低下しており、STINGを阻害すると、C9orf72−/−免疫細胞では過剰活性されたI型インターフェロン応答が抑えられるとともに、C9orf72−/−マウスでは脾腫や炎症が抑制された。また、C9orf72の一方または両方のコピーを欠失したマウスは、実験的自己免疫性脳炎に対する感受性が高まり、これはC9-ALS/FTD患者で見られる自己免疫疾患への感受性を反映している。さらに、C9-ALS/FTD患者の血液由来マクロファージ、全血および脳組織の全てにおいては、孤発性ALS/FTD患者からの試料と比べて、I型インターフェロンシグネチャーの上昇が認められ、このインターフェロン応答の上昇は、STING阻害剤により抑制できる。まとめると我々の結果は、C9-ALS/FTD患者では、C9orf72レベルの低下によりSTINGによるI型インターフェロン誘導を介した炎症を抑制できないため、免疫表現型が変化していることを示唆している。

