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コロナウイルス:COVID-19の臨床転帰に関連するウイルス因子と宿主因子

Nature 583, 7816 doi: 10.1038/s41586-020-2355-0

2019年12月、新規なコロナウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が中国湖北省武漢市で見つかり、すぐに世界中に広がった。この現在進行中のパンデミック(世界的大流行)は公衆衛生上の重大問題であり、有効な治療手段が喫緊に求められていて、それにはCOVID-19の疫学的性質や伝播性、発症機序の十分な理解が必要である。今回我々は、上海でSARS-CoV-2感染が確認された326名の患者から得られた臨床データ、分子データおよび免疫学的データの解析を行った。112の高品質検体と全インフルエンザ情報共有国際推進機構(GISAID)のデータセット中の配列とから組み立てられたSARS-CoV-2のゲノム塩基配列には安定な進化が見られ、武漢でのアウトブレイク(集団発生)の初期に曝露歴に違いのある2つの主要な系統が存在したことが示唆された。それにもかかわらず、これらの毒力と臨床転帰は同様だった。リンパ球減少症、中でも入院時のCD4+およびCD8+ T細胞数の減少は、疾患増悪の前兆だった。重症もしくは重篤な患者では、治療中のインターロイキン6(IL-6)やIL-8のレベルが高く、これはリンパ球数の減少と相関していた。疾患重症度の決定要因は、ほとんどが年齢やリンパ球減少症(およびそれに関連するサイトカインストーム)のような宿主因子に由来するように見え、その一方でウイルスの遺伝的多様性は転帰に大きな影響は及ぼさなかった。

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