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構造生物学:膜融合の起こるpHでインフルエンザウイルスのヘマグルチニンが起こす構造変化

Nature 583, 7814 doi: 10.1038/s41586-020-2333-6

エンベロープを持つウイルスの感染では、脂質からなるウイルスエンベロープと細胞膜との融合が起こってウイルスゲノムが細胞内に放出される。HIV、エボラウイルス、インフルエンザウイルスなどの多くのウイルスでは、エンベロープの糖タンパク質が感染するウイルス粒子を細胞膜の受容体に結合させ、膜融合を仲介する。インフルエンザの場合、受容体に結合する糖タンパク質はヘマグルチニン(HA)であり、受容体を介して結合したウイルスがエンドサイトーシスによって取り込まれた後、ウイルスエンベロープとエンドソーム膜との融合を仲介するのもHAである。三量体であるHAの各サブユニットはジスルフィド結合で結ばれた2本のポリペプチド、HA1とHA2からなる。ウイルス膜から遠い位置にある大きい方のポリペプチドHA1は受容体との結合に関わり、膜に近い位置を占める小さい方のポリペプチドHA2はHAをエンベロープに係留する働きをし、膜の相互作用に直接関わる融合ペプチド領域を含んでいる。エンドソーム内の低pHが、糖タンパク質の不可逆的なコンホメーション変化を促進することにより、融合が活性化する。中性のpHでの当初のHAの構造と、融合の起こるpHでの最終的なHAの構造は電子顕微鏡とX線結晶構造解析によって調べられてきた。今回我々は、融合の過程をさらに詳しく調べるため、HAをさまざまな時間にわたってpH 5.0に保ち、単一粒子クライオ電子顕微鏡を使って構造の変化を直接的に画像化し、これまでに報告されたことのない、3種類の異なる型のHAを明らかにした。特に目立つのがHA2の長さ150 Åの三重らせんコイルで、これがウイルス膜とエンドソーム膜とを架橋している可能性がある。これらの構造の比較から、HAによる膜融合を進行させる、協調的なコンホメーション再構築が明らかになった。

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