Article

原子物理学:HD+イオンを用いた量子電磁力学の精密な検証と基本定数の決定

Nature 581, 7807 doi: 10.1038/s41586-020-2261-5

束縛された三体量子系は、量子電磁力学理論の検証を可能にし、原子物理学の基本定数や原子核の性質をもたらし得ることから、基礎物理学に重要である。最も単純な分子イオンである分子水素イオンは、三体量子系の代表的な例である。分子水素イオンの基底電子状態における振動–回転準位の準安定性から、極めて高い分光学的分解能が得られる可能性がある。それゆえ、こうした系によって、リュードベリ定数(R∞)、陽子質量に対する電子質量の比(me/mp)、重陽子質量に対する電子質量の比(me/md)、陽子と重陽子の核半径が独立して得られ、量子電磁力学の高いレベルでの検証が可能になる。従来の分子イオンの分光法では、長い間、ab initio理論の精度に匹敵する精度は得られておらず、理論の精度は最近大きく向上している。本論文では、線形高周波トラップに蓄積された共同冷却した分子イオンのクラスターに対して、回転分光法の精度を2桁近く向上させたことを報告する。我々は、基本回転遷移の一連の超微細成分を測定した。その評価の結果、基本定数の現状の不確かさに制限される5 × 10−11レベルという、これまでで最も高い精度での量子三体予測の検証が得られた。我々は、基本定数を組み合せた値であるR∞me(mp−1 + md−1)とmp/meを、2 × 10−11の分数不確かさで決定した。これらは、科学技術データ委員会(CODATA)の現在の値と一致するが、より正確である。今回の結果からは、以前の主要な高精度測定の正確性を示す強力な証拠と、陽子と重陽子の間の仮説上の第5の力に関する20倍以上強い限界も得られた。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度