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分子生物学:細胞内の相分離の組成依存的な熱力学

Nature 581, 7807 doi: 10.1038/s41586-020-2256-2

核小体、カハール体、さまざまなシグナル伝達集合体などの細胞内小体は、膜のない細胞小器官、つまり凝縮体であり、液–液相分離(LLPS)を介して形成される。生体分子の相互作用、特にタンパク質の天然変性領域の自己会合によって仲介される同型相互作用は、LLPSの熱力学的推進力の基盤であると考えられており、これによって核小体内のリボソームサブユニットのような生化学的に活性な複合体の組み立てやプロセシングを促進できる凝縮体が形成される。単純化されたモデル系から、単一の一定の飽和濃度が内因性LLPSを決定付ける特徴であるという考えが導かれ、これは細胞内濃度の緩衝機構であると示唆されてきた。しかし、生細胞内では凝縮体が非常に多数の構成要素からなっていて、この単純な図式が複雑になる可能性があり、飽和濃度が一定という仮定はほとんど検討されていなかった。今回我々は、内因性LLPSでは多数の構成要素からなる異型相互作用が大半を占めていて、そこから生じる核小体などの凝縮体の飽和濃度は一定ではないことを示す。個々の構成要素の濃度が変化すると、それらの分配係数は、LLPSの基盤にある熱力学的自由エネルギーを決定するのに使うことのできる様式で変化する。タンパク質とRNA構成要素の間の異型相互作用は、核小体、カハール体、ストレス顆粒、Pボディなど、細胞内のさまざまな典型的凝縮体を安定化することが分かった。これは、凝縮体の組成が、生体分子相互作用ネットワークの基盤にある熱力学によって細かく調整されることを意味している。また、このような現象は、RNAプロセシングが行われている核小体のような凝縮体の中では、完全に組み立てられたリボ核タンパク質複合体の選択的な排除において見られ、リボソームRNAを核小体から排出するための方向性を持った流れを生み出す熱力学的基盤となっている。この方法論は概念的に単純で実装しやすく、顕微鏡画像から熱力学的パラメーターを抽出するために広く用いることができる。これらの手法は、細胞内の多数の構成要素からなる相の挙動の熱力学、そしてそうした熱力学と内因性凝縮体の特徴である非平衡活性との相互作用について、より深い理解への道を開く。

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