材料科学:ハロゲン化物ペロブスカイトの結晶粒接合部における、性能を制限するナノスケールのトラップクラスター
Nature 580, 7803 doi: 10.1038/s41586-020-2184-1
ハロゲン化物ペロブスカイト材料には、安価なオプトエレクトロニクス用途に有望な性能特性がある。ペロブスカイト吸収体を用いて作製した光起電力デバイスの電力変換効率は、単一接合デバイスで25%以上、タンデムデバイスで28%以上に達している。通常は結晶欠陥を多く生じる方法である低温溶液プロセスによって作製した薄膜で、こうした優れた性能(それぞれ約30%、約35%の実用限界未満ではあるが)が得られることは意外である。点欠陥は、ペロブスカイトバンドギャップ内に、性能に影響を及ぼさない浅い電子状態しか生み出さないことが多いが、ペロブスカイトデバイスのバンドギャップ内の深い所には、キャリアを捕捉して非輻射的に再結合させる状態がまだ多くある。そのため、こうした深い捕捉状態によって、フォトルミネッセンスに局所的なばらつきが生じ、デバイス性能が制限される。これらの捕捉状態の起源と分布は分かっていないが、それらは混合ハロゲン化物ペロブスカイト組成における光誘起ハロゲン化物偏析や局所ひずみと関連付けられており、これらはいずれもデバイスを不安定化させる。今回我々は、光電子顕微鏡法を用いて、最高水準のハロゲン化物ペロブスカイト膜における捕捉の分布を画像化した。その結果、フォトルミネッセンス効率の低い領域内における比較的均一な分布ではなく、ばらばらに点在するナノスケールのトラップクラスターが観察された。我々は、顕微鏡法の測定結果と走査型電子解析法の結果を相関付けることで、こうしたトラップクラスターが、結晶学的・組成的にはっきりと異なる領域の界面に現れることを見いだした。さらに我々は、光励起キャリア捕捉過程の一連の時間分解光電子顕微鏡像を生成することで、正孔の局所トラップクラスターへの拡散によって速度が制限される正孔捕捉特性を明らかにする。今回の手法は、最適性能のハロゲン化物ペロブスカイトデバイスを得るには、構造と組成のナノスケールでの操作が不可欠であることを示している。

