ナノスケールデバイス:1ケルビンを超える温度におけるシリコン量子プロセッサーユニットセルの動作
Nature 580, 7803 doi: 10.1038/s41586-020-2171-6
量子コンピューターは、多数(一般に数百万)の量子ビット(キュービット)へスケールアップできるようになれば、分子シミュレーションから検索アルゴリズムまでいくつかの重要な応用において、従来のコンピューターの性能を超えると予想されている。固体キュービット技術の大半(例えば、超伝導回路や半導体スピンを用いる技術)では、キュービットが加わるごとに発熱が増える一方で、動作温度(100 mK未満)における希釈冷凍機の冷却能力が非常に限られているため、スケーリングが大きな課題である。本論文では、量子ドットに閉じ込められた2つのキュービットからなるスケーラブルなシリコン量子プロセッサーユニットセルの、約1.5 Kでの動作を実証する。我々は、電子リザーバーから量子ドットを隔離した後、2つの量子ドット間の電子トンネリングのみによってキュービットの初期化と読み出しを行うことで、これを実現した。我々は、28Si同位体濃縮シリコンにおいて電気的に駆動されたスピン共鳴を用いてキュービットをコヒーレントに制御し、「高温」動作時に1キュービットゲート忠実度98.6%とコヒーレンス時間2 μsを達成した。これらの値は、ミリケルビン温度での天然シリコンのスピンキュービットの値に匹敵する。さらに我々は、このユニットセルが、キュービットのエネルギーが熱エネルギーを大きく下回る0.1 Tという低磁場(キュービット制御周波数3.5 GHzに相当)においても動作し得ることを示す。このユニットセルは、フルスケールのシリコン量子コンピューターの中核的構成要素となり、誤り訂正アーキテクチャーに必要なレイアウトの制約を満たす。今回の研究は、スピンベースの量子コンピューターが、単純な4Heポンプシステム(希釈冷凍機よりも冷却能力が数桁高い)ではより高い温度で動作する可能性があり、これによって古典的な制御エレクトロニクスとキュービットアレイの集積が可能になり得ることを示している。

