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細胞生物学:アポトーシス細胞から放出される代謝物が、組織のメッセンジャーとして働く
Nature 580, 7801 doi: 10.1038/s41586-020-2121-3
カスパーゼに依存したアポトーシスは、体内の恒常性を維持する細胞代謝回転の約90%を占め、炎症や細胞の増殖、組織の再生を調節している。アポトーシス細胞がこのような多様な作用にどのように関わるのかは、完全には解明されていない。今回我々は、アポトーシス細胞の代謝物セクレトームの特性をプロファイリングし、それが組織周囲に及ぼす作用を調べた。その結果、アポトーシスを起こしたリンパ球とマクロファージは特定の代謝物を放出するが、膜の完全性は保持されていることが分かった。放出された代謝物の一部は、異なる刺激によってアポトーシスを誘導した後でも複数の初代細胞や細胞株に共通して見られた。機構としては、アポトーシス細胞の代謝物セクレトームは単に細胞の内容物の受動的排出に起因するものではなく、調節された過程である。細胞膜にあるパネキシン1チャネルがカスパーゼを介して開口し、これが選ばれた一部の代謝物の放出を促進する。また、アポトーシスのさなかも特定の代謝経路は活性を保ち続け、選ばれた代謝物だけを特定の経路から放出する。機能的には、このアポトーシス細胞の代謝物セクレトームは周辺の健康な細胞において、炎症の抑制や細胞増殖、創傷治癒など、特定の遺伝子プログラムを誘導する。さらに、マウスモデルでは、アポトーシス細胞の代謝物の混合物が炎症性関節炎や肺移植片の拒絶反応の重症度を軽減することも分かった。これらのデータから、アポトーシス細胞は除去されるのを待つ不活性な細胞ではなく、「good bye(さようなら)」シグナルとして代謝物を放出して、組織の予後を能動的に変化させるという見方がさらに推し進められた。

