Article
物性物理学:WSe2/WS2モアレ超格子におけるモット状態および一般化されたウィグナー結晶状態
Nature 579, 7799 doi: 10.1038/s41586-020-2092-4
魔法角ねじれ2層グラフェンやABC積層3層グラフェン/窒化ホウ素のモアレ超格子で観測された相関絶縁体状態や超伝導状態において最近実証されたように、モアレ超格子を用いると二次元ファンデルワールスヘテロ構造における強相関電子状態を操作することができる。遷移金属ジカルコゲニド・モアレヘテロ構造は、強い光–物質相互作用や大きなスピン–軌道結合を示すので、相関量子現象の研究に新たなモデル系をもたらす。しかし、この系における相関絶縁体状態の実験的観測は、従来の輸送技術では困難である。今回我々は、半導体WSe2/WS2モアレ超格子における強相関相の光学的検出について報告する。高感度の光学的検出法を用いることで、超格子サイト当たり正孔1個のときにはモット絶縁体状態が、1/3充填および2/3充填の超格子では意外にも絶縁体相が現れることが明らかになった。我々は、この絶縁体相が、基礎となる格子における一般化されたウィグナー結晶化によるものと考える。さらに、遷移金属ジカルコゲニド・ヘテロ構造のスピン–バレー光学選択則によって、モット絶縁体における低エネルギー励起スピン状態を光学的に生成し、調べることができた。我々は、モット絶縁体状態において、数マイクロ秒という非常に長いスピン緩和寿命(電荷励起よりも数桁長い)を測定した。今回の研究は、グラフェン以外のモアレ超格子を用いて相関物理を探ることの価値を浮き彫りにしている。

