地球化学:太古代岩石のルテニウム同位体に保存された後期隕石重爆撃期前の地球マントルの痕跡
Nature 579, 7798 doi: 10.1038/s41586-020-2069-3
太陽系外縁部から揮発性成分に富む物質が地球に集積したことは、地球に海洋が発達し生命が生存可能な惑星となるための重要な前提条件であった。しかし、この集積の時期はまだ議論の的になっている。揮発性物質は、核の形成が終わった後に炭素質コンドライトに似た物質が大量に地球に集積した時(レイトべニア:後期隕石重爆撃期)に付加したと提案されている。しかしこの仮説は、炭素質コンドライトのルテニウム(Ru)同位体組成が、現在のマントルやいかなる既知の隕石群とも全く異なることと調和的ではない。あり得る解としては、後期重爆撃期前の地球のマントルには、核形成の際に完全には核に取り込まれなかったRuの一部が含まれていた可能性が挙げられる。そのような後期重爆撃期前のマントル中のRuの存在は、Ru同位体組成が現在のマントルとは明瞭に異なる場合にのみ立証される。本論文では、グリーンランド南西部で得られた原太古代の超苦鉄質岩に対する、初めての高精度で質量に依存しないRu同位体組成分析結果を報告し、これらの岩石では100Ruが現代のマントルに比べて相対的に22 ppmだけ過剰であることを示す。この100Ruの過剰は、原太古代岩石の起源物質が、後期重爆撃期の集積前に十分なRuを含んでいたことを示している。37億年前までには、グリーンランド南西部の下にあるマントルと後期に集積した物質はまだ完全に平衡になっていなかったと考えられる。そうでなければ、現代のマントルとの相対的なRu同位体の違いは観測されなかっただろう。Ru以外の他の高親鉄性元素による制約条件も考慮すると、現在のマントルの組成は、後期重爆撃期の集積物質が、100Ruに乏しい特徴を持つ炭素質コンドライドに似た物質を多く含んでいた場合にのみ調和的となる。従って、今回のデータは、後期重爆撃期に関するこれまでの制約条件を緩和し、地球の集積後期に揮発性成分に富む物質が太陽系外縁部から輸送されてきたことと調和的である。

