電子デバイス:近藤遮蔽雲の観測
Nature 579, 7798 doi: 10.1038/s41586-020-2058-6
金属中に磁性不純物が存在すると、伝導電子によって、不純物スピンを遮蔽するスピン雲が形成される。この基本的な現象は、近藤効果と呼ばれている。電荷遮蔽とは異なり、スピン遮蔽雲は量子コヒーレントな状況において発生し、不純物とスピン一重項エンタングルメントを形成する。スピンは、不純物の周りで局所的に相互作用するが、近藤雲は、理論的には数マイクロメートルにわたって広がる可能性がある。近藤効果の基本的な特徴である近藤雲はこれまで検出されていないため、それが物理的に存在するか否かは論争の的となってきた。本論文では、近藤雲が、理論的な長さξKに相当する数マイクロメートルの長さにわたって広がっていることを示す実験証拠を提示する。今回のデバイスでは、近藤不純物は量子ドット中に形成されており、ゲートで作られた、1 μmを超えるさまざまな長さLのファブリー–ペロー干渉計を内包する擬一次元チャネルと片側で結合している。量子ドットからLだけ離れた干渉計端のゲート電圧を掃引してコンダクタンスにファブリー–ペロー振動を誘起すると、距離Lでの近藤雲の特徴として、測定した近藤温度TKに振動が観測された。LがξKより小さいとき、TKの振動振幅はLが小さいほど大きくなり、その挙動はL/ξKを単一パラメーターとするスケーリング関数に従う。一方、LがξKより大きいとき、振動ははるかに弱くなる。今回の結果から、ξKは近藤効果に関与する唯一の長さパラメーターであり、この雲の大部分はξKの長さ内にあることが明らかになった。今回の実験法は、多数の磁性不純物や多数の遮蔽チャネルによって形成されるエキゾチックな非フェルミ液体の空間分布の検出や、スピン相関のある系を調べるための手法を提供するものである。

