量子物理学:シリコン中の単一高スピン核のコヒーレントな電気的制御
Nature 579, 7798 doi: 10.1038/s41586-020-2057-7
核スピンは、高度にコヒーレントな量子力学的対象である。大きなアンサンブルでは、例えば、化学、医学、材料科学、鉱業において、磁気共鳴による核スピンの制御と検出が幅広く利用されている。核スピンはまた、固体量子コンピューター向けの初期の提案、量子探索や因数分解のアルゴリズムの実証においても重要な役割を担ってきた。そうした概念を拡大するには、個々の核を制御する必要があり、核は電子と結合していれば検出できる。しかし、核へのアドレスには振動磁場が必要で、磁場は局在化したり遮蔽したりすることができないため、そうした核をナノスケールの多重スピンデバイスに集積するのは難しい。この問題は電場による制御によって解決される可能性があるが、以前の方法は、核コヒーレンスに大きな影響を及ぼす、電子と核の超微細相互作用を介した電気信号の磁場への変換に依存していた。本論文では、シリコンナノ電子デバイス内に生成した局在電場を使った、単一123Sb(スピン7/2)核のコヒーレントな量子制御を実証する。この方法は、1961年に提案されたアイデアを利用しているが、単一の核による実験ではこれまで実現されていなかった。この結果は、核電気四重極相互作用の純粋に電気的な変調から、格子ひずみによって一意的にアドレス可能なコヒーレント核スピン遷移がどのように生じるかを明らかにする微視的な理論モデルによって、定量的に裏付けられた。0.1秒というスピン離調時間は、電気駆動の実現に結合電子スピンを必要とする方法によって得られた結果より数桁長い。今回の結果は、高スピン四重極の核を、カオスモデル、ひずみセンサー、全電気制御を使ったハイブリッドスピン–機械量子系として利用できる可能性を示している。電気的に制御可能な核と量子ドットを集積すれば、振動磁場がなくても動作する、核スピンや電子スピンに基づくスケーラブルなシリコン量子コンピューターへの道が開かれる可能性がある。

