構造生物学:M2ムスカリン受容体–βアレスチン複合体の脂質ナノディスク中での構造
Nature 579, 7798 doi: 10.1038/s41586-020-1954-0
Gタンパク質共役受容体(GPCR)はアゴニストで活性化されるとβアレスチンを引き寄せ、これがヘテロ三量体Gタンパク質シグナル伝達を脱感作して、受容体のエンドサイトーシスを促進する。さらにβアレスチンは、Gタンパク質によるシグナル伝達とは異なる複数の細胞応答を誘発し得る多数のシグナル伝達経路を直接調節している。GPCRとの複合体の高分解能構造が多数報告されているGタンパク質とは対照的に、βアレスチンとGPCRとの相互作用の基盤となっている分子機構の解明はあまり進んでいない。今回我々は、M2ムスカリン受容体(M2R)と複合体を形成したβアレスチン1(βarr1)の、脂質ナノディスク中で再構築されたクライオ電子顕微鏡構造を示す。このM2R–βarr1複合体では順応性のある相互作用のマルチモーダルネットワークが見られ、その中にはβarr1のNドメインと受容体のリン酸化された残基との結合や、βarr1のフィンガーループのM2Rの7回膜貫通バンドルへの挿入などが含まれる。M2Rのこの7回膜貫通バンドルは、M2R–ヘテロ三量体Goタンパク質複合体中のものとよく似たコンホメーションをとっている。さらに、クライオ電子顕微鏡マップから、βarr1のCドメインの縁辺が脂質二重層に結合していることが明らかになった。原子レベルのシミュレーションと、生物物理学的、生化学的、また細胞レベルのアッセイによって、このCドメインの縁辺が安定な複合体形成やβarr1の誘引、受容体の内部移行、Gタンパク質活性化後の脱感作に不可欠であることが分かった。これらのデータを総合すると、βアレスチンが受容体と脂質二重層の両方と協調的な相互作用をすることが、その多様な機能の一因であると考えられる。

