気候科学:1992〜2018年のグリーンランド氷床の質量収支
Nature 579, 7798 doi: 10.1038/s41586-019-1855-2
グリーンランド氷床は、最近数十年の全球海水準上昇の大きな要因であり、今後もそうであり続けると予想されている。氷河流と表面融解が、海洋と大気の温暖化によって増大しているが、この氷床の質量不均衡の規模と軌跡はまだよく分かっていない。今回我々は、グリーンランド氷床の体積、流量、重力ポテンシャルの変化に関する衛星による26の独立した測定結果を比較し、組み合わせて、この氷床の質量収支の調和的な推定値を算出した。その結果、グリーンランド氷床は、1990年代には均衡状態に近かったが、それ以降は年間損失が増大し、2011年には年間3450億 ± 660億トンという最大値に達したことが分かった。全体として、グリーンランドは1992〜2018年に3兆9020億 ± 3420億トンの氷を失い、平均海水準を10.8 ± 0.9 mm上昇させた。我々は、3つの地域気候モデルを用いて、融解水の流出の増加に起因する表面の質量収支の減少によって、1兆9640億 ± 5650億トン(50.3%)の氷損失が生じたことを示す。残りの1兆9380億 ± 5410億トン(49.7%)の氷損失は氷河の動的不均衡の増大に起因し、1990年代には年間460億 ± 370億トンだったがその後年間870億 ± 250億トンに増加した。氷の全損失速度は、2013〜2017年に平均で年間2220億 ± 300億トンに低下したが、これは、大気循環がより寒冷な状況に有利に働き、ヤコブスハブン氷河の終端で海水温が低下したためである。グリーンランドからの氷の累積損失は全体として、気候変動に関する政府間パネルが最も高い気候温暖化シナリオで予測している速さに近い状態が続いており、全球の海水準上昇は2100年までに中央推定値に比べてさらに70〜130 mm高くなると予測される。

