生体力学:ヒトの足の剛性と横アーチの進化
Nature 579, 7797 doi: 10.1038/s41586-020-2053-y
ヒトの足は剛性が高く、この特徴は歩行時や走行時の効率的な蹴り出しを可能にしているとともに、二足歩行の進化において極めて重要であった。ヒトの中足部は独特に湾曲した形状を持ち、このアーチ形状が中足部の剛性を高めていると考えられているのに対し、他の霊長類の足は扁平で中足部で著しく屈曲する。しかし、中足部の形状と剛性との関係については、足の生体力学、足病学、古生物学の領域で今なお議論が続いている。これらの議論は内側縦足弓(内側縦アーチ)に集中しており、ヒトの足に存在する第二のアーチである足根横足弓(足根横アーチ)が剛性に影響を与えているのかどうかは検討されていなかった。今回我々は、足根横アーチが、中足骨間組織を介する作用によって、足の縦方向の剛性の40%以上を担っていることを明らかにする。その根底にある原理は、柔らかい紙幣を横方向に丸めると剛性が著しく高くなるのに似ている。我々は、足根横アーチの剛性寄与を支配する無次元の曲率パラメーターを導き出し、足の力学モデルを用いてその予測能力を明らかにし、ヒト族の足におけるその骨格との相関を見いだした。足では、中足骨間組織の材料特性と中足骨の可動性が縦方向の剛性、ひいては足根横アーチの曲率–剛性関係にさらなる影響を与える可能性がある。化石を分析して各種絶滅ヒト族の曲率パラメーターの進化をたどったところ、ヒト様の横アーチの出現はヒトの二足歩行進化における重要な段階であり、ヒト属(Homo)の出現より少なくとも150万年さかのぼることが示された。足に関するこの新たな理解は、扁平足障害の臨床治療、ロボットの足の設計、ロコモーションにおける足の機能研究を進歩させる可能性がある。

