微生物学:新しい胆汁酸抱合体を含む、マイクロバイオームの全身への化学的影響
Nature 579, 7797 doi: 10.1038/s41586-020-2047-9
全ての後生動物とそのマイクロバイオームの間では、化合物の相互作用が門を超えてモザイク状に起こる。マイクロバイオームによって産生されることが知られている多くの分子ファミリーは、健康と病気のバランスに顕著な影響を及ぼす。ヒトのマイクロバイオームに見られる多様性[その数は4万OUT(operational taxonomic unit)以上]を考えると、マイクロバイオームが動物の全身の化学的性質に及ぼす影響はほとんど調べられていない。今回我々は、質量分析インフォマティクスとデータ視覚化手法を用いて、無菌マウスとSPF(specific-pathogen-free)マウスのメタボロミクスデータを比較し、哺乳類の全身の化学的性質にマイクロバイオームが及ぼす影響について評価した。その結果、微生物相が全ての器官の化学的性質に影響を及ぼすことが見いだされた。これには、フェニルアラノコール酸(phenylalanocholic acid)、チロソコール酸(tyrosocholic acid)、ロイココール酸(leucocholic acid)の産生に使われる宿主胆汁酸のアミノ酸抱合体が含まれていた。胆汁酸の化学的性質について広範な研究が行われてきたにもかかわらず、これらの胆汁酸抱合体は、これまで特徴が明らかになっていなかった。これらの胆汁酸抱合体はヒトにも見られ、炎症性腸疾患や嚢胞性繊維症の患者で豊富であった。これらの化合物はin vitroでファルネソイドX受容体を刺激し、また、これらの化合物を強制経口投与されたマウスは、in vivoで胆汁酸合成遺伝子の発現が低下した。これらの化合物が宿主において生理的な役割を担っているかどうか、またこれらの化合物がマイクロバイオームのディスバイオーシスに関連する腸疾患に関与するかどうかを確かめるためには、さらなる研究が必要である。

