化学:高分子電解質溶液とせん断流を用いた結晶成長の促進
Nature 579, 7797 doi: 10.1038/s41586-020-2042-1
適切なサイズの良質な結晶を成長させる能力は、単結晶回折の基礎の1つであり、多くの工業スケールの化学工程において都合がよく、高品質の結晶データを必要とする新薬の制度上の承認を得るのに重要である。そうした工程や解析に適した単結晶は、数時間から数日かけて成長させることが多く、成長中は機械的擾乱(工程に悪影響を及ぼすと考えられている)が慎重に回避されている。特に、撹拌やせん断流は二次核生成を引き起こすことが知られており(せん断は結晶の質を高める可能性もある)、こうした二次核生成によって最終的な結晶サイズは小さくなる。今回我々は、高分子(好ましくは高分子イオン液体)の存在下では、一定温度の下において、共通溶媒中のさまざまな種類の結晶は静置するよりも撹拌した方がはるかに大きく速く成長することを示す。この結論は、有機分子、無機塩、有機金属錯体、さらには数種のタンパク質といった約20種の多様な物質の研究に基づいている。これらの分子は、数分から数十分という代表的な時間スケールで、規則的なファセットを持つ結晶に成長し、生成した結晶は、成長時間は同じだが撹拌しないか高分子の存在しない対照実験で得た結晶よりも常に大きかった(最大の長さ寸法で約16倍)。我々は、この成長促進を2つの相乗的効果によるものと考える。1つ目は、せん断下では、絡み合った高分子やその凝集体がほどけて溶媒分子を奪い合うため、結晶化種を効果的に「塩析」させる(すなわち、溶解度を減少させることによって結晶化種の析出を誘発する)効果である。2つ目は、局所的なせん断速度が粒子のサイズに依存し、これが最終的により大きな結晶の成長を促進させるという効果である(しかし、古典的なオストワルド熟成に見られるような表面エネルギー効果によるものではない)。今回の閉鎖系におけるせん断に駆動される定温結晶化は、結晶成長方法のレパートリーに加わる貴重な方法となる可能性があり、素材産業や製薬産業に必要な結晶成長の加速を可能にすると考えられる。

