生理学:保存された2つのエピジェネティック調節因子が健康老化を妨げる
Nature 579, 7797 doi: 10.1038/s41586-020-2037-y
長年にわたり、個体寿命と健康寿命には強い相関があると考えられてきたが、この2つは明確に分離できる。ヒトの平均余命は世界的に伸びてきているものの、個体寿命の延長に健康寿命の延長が伴うことはまれである。従って、高齢者の健康行動の源を理解することは、いまだに重要で手ごわい課題である。今回我々は、健康な老化の基盤となる保存されたエピジェネティック機構について報告する。我々は、ゲノム規模のRNA干渉法を用いて、加齢した線虫の一種Caenorhabditis elegansにおいて行動の劣化を調節する遺伝子をスクリーニングし、老化に関連した行動の劣化速度の調節因子候補として、59個の遺伝子を特定した。これらの調節因子の中で、ニューロンのエピジェネティック読み取り因子であるBAZ-2と、ニューロンのヒストン3リシン9に対するメチルトランスフェラーゼであるSET-6が、核にコードされたミトコンドリアタンパク質の発現を抑制して、ミトコンドリア機能を低下させることにより、C. elegansの行動劣化を加速させることが分かった。この機構は、マウスの培養ニューロンやヒトの培養細胞でも保存されていた。ヒトのデータベースを調べたところ、これらのC. elegans調節因子のヒトオルソログであるBAZ2BとEHMT1の前頭皮質での発現は、加齢に伴って上昇し、アルツハイマー病の進行と正に相関していた。さらに、加齢マウスにおいてBAZ-2のマウスオルソログであるBaz2bを除去すると、加齢依存的な体重増加が減り、認知機能低下が防がれた。従って、C. elengansにおける我々のゲノム規模RNA干渉スクリーニングは、保存された負のエピジェネティック老化調節因子を明らかにしており、これによって健康老化を達成できる可能性のある方法が示唆された。

