神経変性:パーキンソン病と多系統萎縮症におけるαシヌクレイン株の識別
Nature 578, 7794 doi: 10.1038/s41586-020-1984-7
シヌクレイノパチーは、αシヌクレインのミスフォールディング(誤った折りたたみ)や凝集と関連付けられている神経変性疾患で、パーキンソン病、レビー小体認知症、多系統萎縮症などが含まれる。臨床において、特に疾患の初期段階では、パーキンソン病と多系統萎縮症とを見分けるのは困難である。異なるシヌクレイノパチーにおけるαシヌクレインの凝集体は、コンホメーション的に異なる別個のαシヌクレイン株に相当し、これらは自己増殖して細胞から細胞へと伝播できると考えられている。タンパク質ミスフォールディング循環増幅(PMCA;protein misfolding cyclic amplification)は、脳脊髄液試料中のαシヌクレイン凝集体を高い感度と特異性で検出するために以前用いられた手法である。本論文では、このαシヌクレイン-PMCA解析法によって、パーキンソン病と診断された患者の脳脊髄液試料と多系統萎縮症患者の試料とを、95.4%の総合感度で識別できることを示す。我々は、生化学的、生物物理学的、生物学的な手法を組み合わせてαシヌクレイン-PMCAの産物を解析し、脳脊髄液中のαシヌクレイン凝集体の特徴が、パーキンソン病と多系統萎縮症とを容易に見分けるのに使える可能性があることを見いだした。また、脳脊髄液試料から増幅された凝集体の性質が、脳の試料から増幅された凝集体の性質に類似していることも分かった。これらの知見は、パーキンソン病と多系統萎縮症に関連するαシヌクレイン凝集体がそれぞれ、コンホメーションの異なるαシヌクレイン株に対応しており、これらはαシヌクレイン-PMCAによって増幅・検出できることを示唆している。今回の結果は、異なるシヌクレイノパチーに関わるαシヌクレインのミスフォールディング機構や凝集体の構造に関する我々の理解を深めるのに役立つとともに、パーキンソン病と多系統萎縮症を識別するための生化学的解析法の開発を可能にすると考えられる。

