環境影響:米国の州横断型大気汚染に関連する早期死亡
Nature 578, 7794 doi: 10.1038/s41586-020-1983-8
屋外大気汚染はヒトの健康に悪影響を及ぼし、米国本土の年間総早期死亡の5〜10%の原因となっていると推定されている。発電や道路交通などのさまざまな排出源からの燃焼排出は、オゾンや微小粒子状物質(PM2.5)などの有害な大気汚染物質に大きく寄与している。大気汚染を緩和する取り組みでは、主に地域の排出源と地域の大気質の関係に重点が置かれてきた。しかし大気質は、隣接する連邦州からの排出を含め、遠方の排出源の影響も受ける可能性がある。こうした州横断的な汚染の交換によって、さらなる規制上の課題が生まれる。今回我々は、米国本土における大気汚染の交換を定量化し、2005〜2018年に7つの排出セクターから排出されたPM2.5とオゾンへのヒト曝露の増加に関連する早期死亡に対する大気汚染の影響を評価した。その結果、平均すると、ある州の排出に起因する大気質に関連した早期死亡の41〜53%が、その州以外の州で生じていることが見いだされた。さらに、早期死亡に対するさまざまな排出セクターと化学種の州横断的な寄与のばらつきと、こうしたばらつきの経時的な変化も明らかになった。全影響に対する州横断的な影響の割合は、発電による排出が最も大きい一方、商業/住宅からの排出は最も小さかった。しかし、2005年以降発電による排出量が削減されたことで、2018年までに商業/住宅セクターに関連する州横断的な早期死亡が、発電に関連する死亡の2倍になっていた。排出された化学種に関しては、2005年には、早期死亡の最も多い原因は窒素酸化物と二酸化硫黄の排出だったが、2018年までには一次PM2.5の排出が、二酸化硫黄排出関連の州横断的な早期死亡の3倍に相当する早期死亡をもたらした。今回報告した早期死亡に寄与する排出セクターと排出種の変化は、米国本土における大気質の改善に役立つ可能性がある。