分子生物学:Zucchiniコンセンサスモチーフがpre-piRNAの産生機構を決定する
Nature 578, 7794 doi: 10.1038/s41586-020-1966-9
約24〜31ヌクレオチド長のpiRNA(PIWI-interacting RNA)は、動物の生殖巣において、PIWIタンパク質によるトランスポゾン抑制を誘導することで妊性を確保している。piRNAの生合成では、pre-pre-piRNAと呼ばれる5′-モノリン酸化RNA断片がまずPIWIタンパク質に積み込まれ、次に、エンドヌクレアーゼによる切断を受けてpre-piRNAが産生される。その後、pre-piRNAの3′末端はエキソヌクレアーゼTrimmer(マウスではPNLDC1)により削り込まれ、メチルトランスフェラーゼHen1(マウスではHENMT1)による2′-O-メチル化修飾を受けて、成熟型piRNAが生じる。エンドヌクレアーゼZucchini(マウスではMitoPLD)は、pre-pre-piRNAのpre-piRNAへの切断を触媒する主要な酵素であると考えられている。しかし、このモデルの直接的な証拠はなく、pre-piRNAが産生される仕組みは不明な点が多い。今回我々は、pre-piRNAの産生機構を解析するため、カイコのTrimmerノックアウト細胞株を樹立し、それを用いて、PIWIタンパク質に積み込まれたpre-pre-piRNAのZucchiniによる切断を忠実に再現する無細胞系を確立した。我々は、pre-piRNAは、並行して働くZucchini依存的および非依存的な機構により産生されていることを見いだした。Zucchiniによる切断は、pre-pre-piRNAのこれまで知られていなかったコンセンサスモチーフ上で起こり、RNAヘリカーゼArmitageを必要とし、pre-piRNAの2′-O-メチル化修飾を伴っていた。一方で、Zucchiniモチーフと一致度の低い配列を持つpre-pre-piRNAの切断は、下流の相補的piRNAによって達成されており、2′-O-メチル化修飾のないpre-piRNAが産生されていた。エンドヌクレアーゼによるいずれの切断機構においても、pre-piRNAはTrimmerとHen1によって成熟した。我々の知見は、piRNA前駆体のプロセシング機構が多重化されており、これによってpiRNA生合成システムの頑強性および柔軟性が担保されていることを示すものである。

