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医学研究:喫煙とヒト気管支上皮における体細胞変異
Nature 578, 7794 doi: 10.1038/s41586-020-1961-1
喫煙は肺がんを引き起こし、この過程は、たばこの煙に含まれる60種類以上の発がん物質がDNAを直接損傷して変異させることにより進行する。肺がん細胞のゲノムにたばこが及ぼす重大な影響に関しては十分に裏付けられているが、正常な気管支細胞に関しては同等のデータが存在しない。今回我々は、16人の被験者から採取した単一の気管支上皮細胞に由来するコロニー632個に関して、全ゲノム塩基配列を解読した。その結果、喫煙は変異負荷に対する主要な影響であり、一般に1細胞当たり1000~1万個の変異を加え、被験者内および被験者間のばらつきを共に大幅に増大させ、複数の明確な変異シグネチャーを持った塩基置換および挿入欠失を生じさせることが分かった。喫煙歴のある被験者の細胞には、喫煙経験の全くない人に予測されるのと同等の変異負荷を有する細胞集団が存在した。これらの細胞は、たばこ特異的な変異過程による損傷が少なく、元喫煙者には現喫煙者の4倍の頻度で存在し、より変異の多い細胞と比べてテロメアが顕著に長かった。ドライバー変異は年齢とともに頻度が増え、喫煙経験の全くない中年被験者では4~14%の細胞に存在した。現喫煙者では25%以上の細胞にドライバー変異が存在し、2個または3個ものドライバー変異を有する細胞も0~6%認められた。このように、喫煙は変異負荷や細胞間の不均一性、ドライバー変異を増大させるが、禁煙はたばこによる変異生成を免れた有糸分裂停止細胞による気管支上皮の復元を促進する。

