物性物理学:250 Kの超伝導水素化ランタンにおける量子結晶構造
Nature 578, 7793 doi: 10.1038/s41586-020-1955-z
高圧力下の硫化水素系において200 Kで超伝導が発見されたことで、水素を豊富に含む物質が高温超伝導体になる可能性が実証された。最近、水素ケージを持つ希土類水素化物が理論的に予測され、続いて超伝導臨界温度(Tc)が250 KのLaH10が合成されたことで、こうした物質が、長年の目標である室温超伝導の実現まであとわずかに迫るものとして位置付けられるようになった。電気抵抗測定とX線回折測定の結果から、137~218 GPaの範囲において、LaH10はランタン原子が面心立方配列した構造をとり、Tcが圧力にあまり依存しないことが以前明らかになっている。今回我々は、この圧力範囲において高対称Fm3m結晶構造が原子の量子ゆらぎによって安定化することを示す。この構造は、実験結果と整合するもので、電子–フォノン結合定数が3.5という非常に大きな値をとる。原子核を古典的に扱うab initio計算からは、このFm3m構造が230 GPa未満の圧力でひずみ、複雑なエネルギー地形を生じさせると示唆されているが、量子効果を考慮すると、この高対称構造が真の基底状態構造となっていることが示唆される。Tcの計算値と実験値の一致は、この相が250 Kで観測された超伝導の原因であることのさらなる証拠となる。量子ゆらぎの重要性は、古典的アプローチに基づいて水素化物に対して行われたこれまでの結晶構造予測や、現在室温超伝導の実験的探索の指針となっている結晶構造予測の多くに新たな課題を提示するものである。さらに我々は、電子–フォノン結合定数が大きく、通常の状況ではその大きな電子–フォノン相互作用によって不安定化し得る固体を安定化させ、ひいては合成に必要な圧力を低減させるために量子効果が不可欠であることを見いだした。

