ナノスケール材料:グラム規模のグラフェンのボトムアップ型フラッシュ合成
Nature 577, 7792 doi: 10.1038/s41586-020-1938-0
バルク規模のグラフェンの大半は、グラファイトを剥離するトップダウン型の手法で作製されており、この方法では高エネルギー混合、せん断、超音波、電気化学的処理において大量の溶媒を必要とすることが多い。グラファイトから酸化グラフェンへの化学的酸化でも剥離は促進されるものの、過酷な酸化剤を必要とし、その後の還元段階で欠陥の多い穴開き構造のグラフェンができる。高品質グラフェンのボトムアップ型合成では、化学気相成長法や先端的な有機合成法によって得られる量は極めて少量に制限されることが多く、大量の溶液中での合成法では、欠陥の多い構造が得られる。今回我々は、石炭、石油コークス、バイオ炭、カーボンブラック、廃棄食品、ゴムタイヤ、混合プラスチック廃棄物などの安価な炭素源のフラッシュジュール加熱によって、グラム規模の量のグラフェンが1秒足らずで得られることを示す。合成工程にちなんでフラッシュグラフェン(FG)と名付けたこの生成物は、積層グラフェン間に乱層配列を示す(すなわち、秩序がほとんどない)。FG合成では、炉を用いておらず、溶媒や反応性ガスも使用していない。収率は炭素源の炭素含有量に依存し、カーボンブラック、無煙炭、か焼コークスなどの高炭素源を用いると80〜90%の範囲で、炭素純度は99%を超え得る。また、精製段階も必要としない。ラマン分光分析では、FGのDバンドの強度が低いか存在しないことが明らかになり、FGの欠陥濃度はグラフェンについてこれまで報告されたものの中で最も低いことが示された。これは、FGが乱層グラファイトとは明確に区別される乱層積層構造を有することを裏付けている。FG層間の配向は無秩序なので、複合材料形成時に混ぜると速やかな剥離が促される。FG合成の電気エネルギーコストはわずか約7.2 kJ g−1であるため、FGはプラスチック、金属、合板、コンクリートなどの建築材料のバルク複合材料用に適している可能性がある。

