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高分子:プロトンを選択的に高速輸送する単一鎖ヘテロポリマー
Nature 577, 7789 doi: 10.1038/s41586-019-1881-0
タンパク質の精密な配列と折りたたみから、天然のチャネルの構造と化学的多様性が生じると考えられており、この構造と化学的多様性は共に、天然系で見られるものに匹敵するプロトン輸送性能を人工的に実現するのに不可欠である。ペプチド、DNA、カーボンナノチューブ、配列決定されたポリマー、有機骨格を用いて、幾何学的に規定されたチャネルが作製されているが、これらのチャネルは全て、天然のチャネルで観察される性能には及ばない。今回我々は、原子レベルで構造化されたチャネルを形成することなく、4種のモノマーに基づくランダムヘテロポリマー(RHP)によって膜タンパク質を模倣でき、天然のプロトンチャネルと同等の速度で脂質二重層を横断する選択的プロトン輸送が可能になることを示す。RHP内のモノマー分布を統計的に制御すると、疎水性がセグメント間で不均一になることで、脂質二重層への単一RHPの挿入が促進される。また、これによって、極性モノマーを含む二重層貫通セグメントが生じ、プロトン輸送に適した水素結合鎖の形成が促進される。今回の研究は、不均一系において均一な挙動を実現するには、RHP鎖間の統計的類似性によって可能になる適応性と、モノマーの化学的多様性によってもたらされるモジュール性が重要であることを実証している。また、今回の結果は、単一ポリマー鎖レベルでのタンパク質様挙動を予測可能な形で実現する未開拓の手法として、統計的ランダム性の妥当性を立証するものでもある。

