神経科学:内的状態の動態が全脳的活動と探餌行動を形作る
Nature 577, 7789 doi: 10.1038/s41586-019-1858-z
脳は持続的な内部状態を持ち、動物の精神的経験のあらゆる局面はそれらの状態によって調節され得る。探餌行動のような複雑な課題では、その内部状態は動的である。線虫の一種Caenorhabditis elegansは、局所的な探索と広域への分散とを交互に繰り返す。齧歯類や霊長類では、消費と探索はトレードオフの関係にある。しかし、脳内で持続的状態がどのようにして維持されるのか、どの上流回路網が状態の遷移を駆動するのか、状態を符号化するニューロンは適切な行動をとるために知覚と意思決定にどのような神経調節作用を及ぼすか、といった基本的な問題は残されたままである。今回我々は、自由遊泳中のゼブラフィッシュ幼生において、トラッキング顕微鏡技術を用いて細胞レベルの分解能で全脳のニューロン活動をモニタリングし、ゼブラフィッシュが生きた餌(ゾウリムシ)の探餌中に、2つの持続的内部状態の間を自発的に切り替えることを示す。消費状態では、ゼブラフィッシュは移動運動を抑制して捕食を促進し、その結果、短く局所的な泳跡が生じる。探索状態では、ゼブラフィッシュは移動運動を促進して捕食を抑制し、その結果、長い泳跡が生じて空間的分散が促される。我々は、消費状態をロバストに符号化し、持続的な活動を示す背側縫線核細胞群を見いだした。この消費状態符号化ニューロンは、状態の遷移に関係する多モードトリガー回路網と共に、確率論的に働く非線形動的システムを形成する。この振動性回路網の活動は、探餌行動中の知覚運動変換の全体的な再調整と相関しており、捕食の動機付けと捕食中の一連の運動の正確性の両者を、大きく変化させる。この研究により、動機付けと意思決定の時間構造を形作る、重要で隠された変数の存在が明らかになった。

