ウイルス構造:ヒトメタニューモウイルスのポリメラーゼ・リン酸化タンパク質複合体の構造
Nature 577, 7789 doi: 10.1038/s41586-019-1759-1
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)とヒトメタニューモウイルス(HMPV)は、幼児や高齢者で重篤な呼吸器疾患を引き起こす。RSV感染やHMPV感染を阻止するワクチン、もしくは有効な抗ウイルス療法は現在のところ存在しない。ウイルスゲノムの複製と転写の間に、四量体を形成しているリン酸化タンパク質Pはリボ核タンパク質鋳型とLタンパク質の間をつなぐ重要なアダプターとして働く。Lタンパク質はRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)活性、GDPポリリボヌクレオチジルトランスフェラーゼ活性およびキャップ特異的メチルトランスフェラーゼ活性を持つ。Pタンパク質がLタンパク質と相互作用して、遊離型Nタンパク質およびリボ核タンパク質との結合を仲介する仕組みは、HMPVあるいは主なヒト病原体(麻疹やエボラ出血熱、狂犬病の原因となるウイルスなど)では明らかになっていない。今回我々はクライオ(極低温)電子顕微鏡画像の再構成を行い、HMPVのPタンパク質四量体へ結合したLタンパク質のポリメラーゼおよびキャップドメインが作るリング型構造を明らかにした。Lタンパク質のコネクタードメインとメチルトランスフェラーゼドメインはコア部分に対して移動できる。RNA合成開始に重要なプライミングループと思われる構造は完全に引っ込められ、そのため活性化部位の空洞中にRNAが伸長し得る空間が残されている。Pタンパク質はLタンパク質のN末端領域と広範囲にわたって相互作用し、界面の分子表面面積の4016 Å2以上を隠している。Pタンパク質のコイルドコイル構造の四量体ドメインを形成する4本のヘリックスのうちの2本と、これら2本のヘリックスから伸びるC末端の長い伸長部分は、触手のようにLタンパク質に巻き付いている。4つのPプロトマーは遊離状態では大部分が無秩序な構造をとっており、その構造的多機能性は、Pタンパク質のアダプター機能を遂行するために採用されている「パートナーと結合してから折りたたまれる」という機構の一例である。この構造は、Pタンパク質がLタンパク質の複数の機能を調整している可能性を明らかにしており、これらの結果は特異的な抗ウイルス薬の設計を加速すると考えられる。

