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進化学:高分解能の系統追跡により明らかになった実験用酵母における適応の進行波
Nature 575, 7783 doi: 10.1038/s41586-019-1749-3
多くの病原微生物やウイルスなど、迅速に適応する無性集団では、多数の変異系統はしばしば、集団内で優位に立つために競合する。このような複雑な進化動態が適応の結果を決定するが、この動態を直接観察するのは難しかった。これまでの研究では、分子適応を追跡するために全ゲノム塩基配列解読法が用いられてきたが、微生物群集の場合、この方法では分解能に限界があった。今回我々は、更新可能なバーコードシステムを導入して、実験用出芽酵母における進化動態を高分解能で観察した。その結果、ごく低頻度で、入れ子になった干渉パターンとヒッチハイクが見つかった。これらの事象は、新しい変異の連続的な出現によって起こり、かなりの頻度に達する前に既存の系統の運命を変化させる。我々は、集団内の適応度分布が時間とともにどのように変化するかを観察し、理論から予測されていた適応の進行波を発見した。また、クローンの競合により、動的な「金持ちはさらに金持ちに」効果が生じることが明らかになった。すなわち、進化の早い段階で獲得した適応度上の有利さはクローン増殖を促進し、これがその後に変異を獲得する機会を増加させる。一方で、適応度の低い系統も、適応度の高い系統を飛び越えることがよくある。我々の結果は、複数の要因の組み合わせが、適応の速度、予測可能性、分子基盤の決定に重要であることを実証している。こうした組み合わせは、既存の進化動態モデルでは考慮されていなかった。

