生化学:海洋プロテオバクテリアはβ-ヒドロキシアスパラギン酸回路を介してグリコール酸を代謝する
Nature 575, 7783 doi: 10.1038/s41586-019-1748-4
グリコール酸は海洋において最も豊富に存在する有機炭素源の1つで、海洋植物プランクトンによって分泌される結果、海洋環境におけるグリコール酸の年間フラックスは推定1ペタグラムに達する。グリコール酸は海洋細菌によってグリオキシル酸へと酸化されるというのが通念だが、このC2代謝物のその後の運命についてはよく分かっていない。本論文では、普遍的に存在する海洋プロテオバクテリアには、56年前に初めて提唱されたβ-ヒドロキシアスパラギン酸回路(BHAC)を介してグリオキシル酸を同化する能力があることを示す。我々は、BHACの生化学的性質を明らかにし、これまで知られていなかった第一級イミン還元酵素など、BHACで重要な役割を果たす酵素の構造について報告する。全体として、BHACはわずか4種類の酵素段階を介してグリオキシル酸からのオキサロ酢酸の直接産生を可能にしており、これは我々が知る限り、これまでに報告された中で最も効率的なグリオキシル酸同化経路である。海洋メタゲノムの解析から、BHACは全球的に分布していて、他にグリオキシル酸を単独で同化することが知られている唯一の経路であるグリセリン酸経路よりも平均して20倍多く存在することが明らかになった。植物プランクトンの大増殖(ブルーム)の実地調査からは、グリコ-ル酸が高ナノモル濃度で存在していて、原核生物は、このグリコール酸プールを1週間以内に完全に代謝回転できるほどの速度で取り込むことが分かった。ブルームの間、BHACの重要な酵素群をコードする遺伝子群は細菌群集の最大1.5%に存在して活発に転写されており、これは、グリコール酸同化におけるBHACの役割を裏付けるとともに、独立栄養植物プランクトンと従属栄養細菌プランクトンとの間のこれまで報告されたことのない栄養相互作用の存在を示唆している。

