クロマチン:アルコール代謝は脳のヒストンアセチル化の一因である
Nature 574, 7780 doi: 10.1038/s41586-019-1700-7
最近明らかになった証拠から、エピジェネティック調節は代謝の状態に依存していて、特定の代謝因子が行動を推進する神経機能に関与していることが明らかになってきている。ニューロンでは、ヒストンのアセチル化は代謝物であるアセチルCoAに依存して起こり、アセチルCoAはクロマチンに結合しているアセチルCoAシンテターゼ2(ACSS2)によって酢酸から作られる。特に、肝臓でのアルコールの分解は血中酢酸レベルの急激な上昇につながるので、アルコールは体内の酢酸の主要な供給源である。従って、ニューロンでのヒストンアセチル化は、アルコール由来の酢酸の影響を受ける可能性があり、脳でのアルコール誘発性の遺伝子発現、ひいては行動に影響しているかもしれない。今回我々は、マウスでin vivo安定同位体標識法を用いて、アルコール代謝が脳での急速なヒストンアセチル化に関わっており、アルコール由来のアセチル基がACSS2によって直接ヒストンに結合・集積することがその一因であることを明らかにする。これによく似た直接的なアセチル基の集積は、in vivoでマウスに重原子で標識した酢酸を注入した際にも観察された。妊娠マウスを標識したアルコールに曝露すると、標識されたアセチル基が妊娠中の胎仔の脳に取り込まれた。単離した海馬一次ニューロンを使ったex vivo実験では、細胞外酢酸が学習と記憶に関連する転写プログラムを誘導し、この誘導はACSS2による阻害に感受性を示した。また、in vivo実験では、アルコールが関連する連合学習にはACSS2が必要なことが明らかになった。これらの知見は、アルコール代謝と遺伝子調節との間には、脳でのACSS2に依存するヒストンアセチル化を介した直接的な結び付きがあることを示唆している。

