気候科学:南極の氷から得られた200万年前の大気中の気体のスナップショット
Nature 574, 7780 doi: 10.1038/s41586-019-1692-3
過去80万年にわたって、氷期–間氷期サイクルの振動周期は10万年であった(「10万年周期の世界」)。氷床コアと海洋堆積物のデータは、10万年周期の世界では、大気中の二酸化炭素濃度、南極の気温、深海の水温、全球の氷体積が互いに強く相関していたことを示している。約280万〜120万年前は、氷期サイクルの振幅がより小さく、持続期間はより短かった(「4万年周期の世界」)。深海の堆積物から得られる代理指標データは、4万年周期の世界では、大気中二酸化炭素濃度の変動も10万年周期の世界より小さかったことを示唆しているが、この期間の大気中の温室効果ガス濃度を示す直接的な観測結果はない。本論文では、東南極のアランヒルズにあるブルーアイス地域から、層位が不連続な200万年以上前の氷を回収したことを報告する。200万年以上前の氷床コア試料の二酸化炭素濃度とメタン濃度は、呼吸によって変化してきたが、より若い試料には元のままのものもあった。今回回収された氷床コアによって、大気中の二酸化炭素濃度、メタン濃度、南極の気温(局地的な気温の代理指標である重水素と水素の同位体比δDiceに基づく)の直接観測結果が、4万年周期の世界まで拡張された。80万年前以前の気候特性は全て、10万年周期の世界を特徴付ける南極深部の氷床コアの観測結果の範囲内に収まっていた。しかし、4万年周期の世界の二酸化炭素濃度、メタン濃度、南極の気温の最も低い測定値は、過去80万年の氷期の値を大きく上回っていた。今回の結果は、大気中の温室効果ガス濃度と南極の気候の氷期–間氷期変動の振幅は4万年周期の世界では小さかったこと、4万年周期の世界から10万年周期の世界への移行は氷期極大期における二酸化炭素の最小濃度の低下を伴っていたことを裏付けている。

