細菌:直交するシグナル伝達経路の設計により明らかになった配列空間の低い占有率
Nature 574, 7780 doi: 10.1038/s41586-019-1639-8
遺伝子重複は、細胞が新しいシグナル伝達経路を作り出すためのよく見られる強力な機構だが、重複してから間もないタンパク質は通常、相互間、また他のパラログとの間での望ましくないクロストークを防止するために、隔離しておかなくてはならない。新しいセンサーあるいは合成シグナル伝達経路の細胞内導入やゲノム間での移動の場合にも、同様な難問が生じる。細胞への新しい経路の導入がどの程度容易に行えるかは、特異性決定残基によって決まる配列空間に存在するパラロガスな経路の密度と分布状態に左右される。今回我々は、大腸菌(Escherichia coli)で新規な2成分シグナル伝達タンパク質を生成させることによって、このような配列空間がどの程度混み合っているのかを、共進化的パターンを基に設計した大規模なライブラリーをセルソーティングとディープシークエンシングを組み合わせて使って解析することで直接調べた。元のタンパク質とは異なった特異性を持つ機能性キナーゼと基質の対からなり、他からは隔離された58の経路を作成したところ、これらの新規な対のうちの複数が、大腸菌に存在する27のパラロガスな経路全てに対して直交性を持つことが実証された。さらに、生成したキナーゼ–基質対の中から、6組の対からなり、相互に直交性を示すセットが複数見つかった。これにより、大腸菌の2成分性シグナル伝達能はかなり増大することになる。これらの結果は、配列空間は密に占有されてはいないことを示している。配列空間中のパラログが低密度であることは、進化の過程で新しい隔離された経路が容易に生じ得ること、そしてde novoでの設計が可能であることを示唆している。de novoでの作成が可能なことは、植物のサイトカイニンに応答するが、既存の他の経路とはクロストークしないシグナル伝達経路を大腸菌に導入することによって実証できた。今回の研究はまた、共進化を手掛かりにした変異導入と配列空間のマッピングを用いて、直交性のタンパク質間相互作用の大規模セットを設計できることを実証している。

