マイクロ流体力学:マイクロ流体デバイスにおける自己融合流によるパルス状試薬送達
Nature 574, 7777 doi: 10.1038/s41586-019-1635-z
マイクロ流体システムは、特定のアッセイに必要な試薬と操作技術を全て1つのデバイスに一体化することによって、外部装置や専門技師を必要としない持ち運び可能な臨床現場即時診断を実現できる。カギとなる手法は、特殊なインクジェットプロッターを用いてマイクロチャネル内にピコグラム量の乾燥させた試薬をマイクロメートルの精度で配置することである。これは、試薬が長期間保存可能であり、液体試料を加えると自発的に元に戻せることを意味している。しかし、せん断流によって試薬の分散が促進され、移動する液体前面に試薬が集積する傾向にあり、元に戻した試薬の濃度プロファイルを時空間的に制御しにくくなることから、複数の試薬を用いて複雑な操作を実行することは困難である。解決策の1つに、液体への試薬放出速度を制限することが挙げられる。しかし、この方策では、さまざまな試薬、条件、目標とする操作を微調整する必要があり、高性能オンチップ検査に必要とされる複数試薬の複雑な時間依存性濃度パルスを容易に得ることができない。今回我々は、「自己融合(self-coalescence)」と名付けた毛管流現象を報告し、特性を評価した結果を示す。この現象は、伸びた空気–液体界面を有する閉じ込められた液体がマイクロ流体チャネル内で自らに向け勢いよく押し込められるときに見られるもので、これによって、分散を最小限にして試薬を元に戻すことが可能になる。我々は、この効果の物理的基礎を捉える総合的枠組みを提示する。また我々は、付着させた乾燥試薬を水溶液中で時空間的に精密に制御しながら溶かすために、この現象を利用し制御するスケーラブルな小型受動マイクロ流体構造「自己融合モジュール(self-coalescence module:SCM)」も作製した。我々は、SCMが複数の試薬を元に戻して、液体流の中で局所的に反応させたり、あるいは連続的に送達できることを示す。SCMは、さまざまな材料で簡単に作製でき、さまざまな試薬操作ができるように容易に設定でき、他のマイクロ流体技術と容易に組み合わせることができるので、少量の複雑な溶液を効率よく調製して操作する必要のあるアッセイ、診断、高スループットスクリーニングなどの技術に役立つはずである。

