古生物学:鋏角および原始的な書鰓を有する中期カンブリア紀の節足動物
Nature 573, 7775 doi: 10.1038/s41586-019-1525-4
鋏角類は種数の多い普遍的な動物群で、特に昆虫の捕食者として、また、例えば分解者として、現在の陸上生態系に著しい生態学的影響を及ぼしている。化石記録からは、鋏角類が古生代の海洋生態系において、遅くともオルドビス紀という早い時期に多様化していたことが示されている。しかし、鋏角類が出現した時期、そしてこの動物群の最初期の構成種を特徴付けるボディープランの種類に関しては、議論が続いている。これまでに、大付属肢類(Megacheira)は鋏角類に類似と解釈され、サンクタカリス類(Sanctacaris)を含むハベリア類(Habeliida)は鋏角類の直接のステム群系統に属することが示唆されているものの、鋏角類の特徴である特殊化した摂食用付属肢(鋏角)の存在を示す証拠は得られていない。今回我々は、中期カンブリア紀のバージェス頁岩(カナダ・ブリティッシュコロンビア州マーブルキャニオン)の極めて保存状態の良い豊富な化石試料を用いて、新種Mollisonia plenovenatrixが両眼の間のごく前方に頑丈で短い鋏角を有することを明らかにする。これは、鋏角が、おそらく短い小触角の変形したものとして、特殊化した摂食機能を早期に獲得したことを示唆している。頭部には1対の大きな複眼があり、その後ろに3対の長い単枝型歩脚と3対の太く丈夫な顎基の咀嚼用付属肢が位置していて、この配列はハベリア類を真鋏角類(ウミグモ類を除く「真の」鋏角類)と結び付けるものである。胴は、最後部に4つに分節した尾節があり、また全体にわたって11対の同一構造を持つ肢が並んでいる。これらの肢は、それぞれ3つの幅広い層板状フラップからなる外肢で、内肢は縮小しているか存在しない。これらの重なり合う外肢フラップは真鋏角類の書鰓に類似しているが、真鋏角類に特徴的な蓋板は持たない。さらに、M. plenovenatrixの眼は3つの視覚ニューロピルによって神経支配されており、これは、軟甲類様の複雑な視覚系が全てのクラウン群真節足動物の原始形質であった可能性があるとする見解を裏付けるものである。従って今回の化石は、鋏角類がカンブリア爆発の中心において、底生の微小捕食者として大顎類と共に出現したことを示している。

