遺伝学:多様な集団の遺伝的解析によって複合形質の発見が改善される
Nature 570, 7762 doi: 10.1038/s41586-019-1310-4
ゲノム規模関連解析(GWAS)は、複合形質の生物学的性質の研究、薬剤開発、臨床ガイドラインの基礎を築いてきた。しかし、GWASによる発見の取り組みの大多数は、ヨーロッパ系の人々のデータに基づいている。集団間に存在することが知られている遺伝的構造の差異を考慮すると、結果に表れる偏りは、疾患や医療における既存の格差を悪化させる可能性がある。重要なバリアントであっても、それらがヨーロッパ系集団において低頻度であったり全く存在していなかったりする場合は見逃される可能性があり、現在この分野ではまれなバリアント(これは集団特異的であることが多い)へと関心が移ってきていることから、そうした可能性は特に高まると考えられる。さらに、単一の集団から得られる効果量やそこから導かれるリスク予測スコアは、他の集団に正確に外挿できない可能性がある。今回我々は、大規模ゲノム研究における、多民族からなる多様な参加者の価値を実証する。「ゲノミクスと疫学を用いた集団構造(PAGE)」研究では、非ヨーロッパ系の4万9839人において26の臨床表現型および行動表現型についてGWASが行われた。我々は、多民族集団や混合集団の解析に合わせた戦略を用いて、多様な集団を解析するための枠組みを説明するとともに、27の新規座位と既知の座位での38の二次的な関連シグナルを特定し、これらの形質についてGWASカタログでの1444の関連を再現した。我々のデータは、報告されているGWASの関連には異なる系統の集団間に効果量の不均一性があることの証拠、多様なコホートを用いた精細マッピングの大きな利点、そして臨床的に意義のある手掛かりを示している。少数集団における慢性疾患の負荷が不釣り合いに高い米国では、多様な集団を対象にしていない遺伝的研究は、疾患負荷が最も高い人々がプレシジョン・メディシンを公平に利用できないことにつながると考えられる。我々は、遺伝的発見を最大にして、医療格差を低減するために、多様な集団で大規模なゲノム規模の取り組みを継続して行うよう強く提言する。

